大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和55年(行ウ)12号 判決 1983年1月20日

原告 東京流機製造株式会社

被告 中央労働委員会

補助参加人 総評全国金属労働組合神奈川地方本部外一名

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立て

一  原告

1  原告を再審査申立人、被告補助参加人両名を再審査被申立人とする中労委昭和五一年(不再)第五五号事件について、被告が昭和五四年一二月一九日付でなした命令を取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告および被告補助参加人両名

主文と同旨。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  神奈川地方労働委員会(以下「地労委」という。)は、被告補助参加人両名が原告を被申立人として申立てていた不当労働行為救済申立事件(神労委昭和五一年(不)第三号、同第七号)について、昭和五一年六月一八日付で別紙二の命令書記載のとおりの命令(以下「初審命令」という。)を発した。原告は、右初審命令を不服とし、被告に対して再審査の申立てをしたところ(中労委昭和五一年(不再)第五五号)、被告は、昭和五四年一二月一九日付で別紙一の命令書記載のとおりの命令(以下「本件命令」という。)を発し、この命令書は、同年同月二九日原告に送達された。

しかしながら、本件命令はつぎのとおり違法であるから、その取消しを求める。

2  本件命令の違法性

(一) 本件命令書理由第一(当委員会の認定した事実)に対する認否

(1) 「当事者」については、「神奈川地本」および「支部」の組合員数は不知、その余は認める。

(2) 「労働時間短縮問題について」の「本件の発生に至るまでの経緯」は認める。

「本件の経緯」についての<1>、<2>、<6>ないし<8>、<10>記載の各事実はいずれも認める。<3>のうち、協定の締結が合理化対策の実施を円滑に行うためとの点は否認、支部が一時帰休の実施や希望退職者の募集の問題の対応に追われていたとの点は不知、その余の記載事実は認める。<4>のうち、支部が時間短縮に関する問題は団体交渉で折衝すべき事項であると主張したとの点は否認し、その余の記載事実は認める。<5>のうち、労使が対立したことは認めるが、各主張内容については否認する。<9>のうち、昭和五一年一月二八日に時間短縮に関する団体交渉が行なわれ、席上、会社が「労働協約解約通知書」を支部に手交したこと、および、会社は「今回提案した時短案をとにかく五月から実施する。」と通告し団体交渉は終つたことは認めるが、その余の記載事実は否認する。

「本件申立て後の経緯」についての<1>、<3>記載の事実は認める。<2>のうち、「譲歩案」である点は否認し、その余の記載事実は認める。

(3) 「組合費の給料からのチエツク・オフ廃止通知について」の(1)のうち、支部が会社に対し文書をもつてチエツク・オフを依頼したことは不知、その余の事実は認める。同(2)の事実は認める。同(3)のうち、会社が当分の間チエツク・オフの廃止を猶予する表明をしたことは否認し、その余の事実は認める。

(二) 初審命令主文第一項にかかる事項についての違法

(1) 認定の誤りの違法

原告は、組合(被告補助参加人総評全国金属労働組合神奈川地方本部東京流機支部)の参加は得られなかつたが、労使の審議機関ともいうべき時間短縮委員会を六回開催し、委員会から答申された二案のうちの一つを採用し、これを組合に提示し、労働時間短縮の実施までに七回もの団交を重ねている。被告は、本件命令において、これらの団交を「団体交渉を実質的に拒否」あるいは「団体交渉の実質を備えたものとは言い難い」と認定しているが、不誠実団交であつたか否かは団交の経過全体を通じて判断すべきところ、労働時間短縮問題に関して、如何なる時短案に対しても一日の労働時間の延長を認めないとする方針が組合にはあり、会社(原告)は、一日の労働時間を延長しなければ休日を増やせないとの生産コストから割り出した基本方針があつて、その対立が平行線を辿り、組合の時短委員会への参加拒否となり、団交が進展しなかつたとの交渉経過をつぶさに検討すれば、原告が不誠実な団体交渉をしたと認定することは一方に偏しているといわざるを得ない。

(2) 被救済利益が存在しないのに救済した違法

原告は、労働時間短縮問題につき、組合と実質的な団体交渉により協議を尽くしているので、被救済利益は消滅している。

(3) 申立てのない事項について命令した違法

救済申立てによれば「労働時間の変更について、申立人との団体交渉で協議の整わない場合には、一方的に実施しないこと。」となつており、極めて抽象的、包括的な救済申立てであるのに対し、具体的、個別的な事項を含む命令をなしたこと、また、さらに、そのような事項が手続上攻撃防禦の対象となることを明確にしなかつたことは、申立てのない事項について判断したものであり、違法である。

(三) 初審命令主文第二項にかかる事項についての違法

(1) 認定の誤りの違法

労働組合法第一五条三項は、チエツク・オフの解約の自由を認めており、文言上何ら制約がないところ、原告は、チエツク・オフ協定はなかつたが、この規定にのつとつてチエツク・オフの廃止通告をしたものであり、右通告は救済申立書が原告に交付される前になしたものであるから、「被告の救済申立てに対する報復を意図して通告した」との判断は誤つている。

(2) 被救済利益が存在しないのに救済した違法

原告は、地労委での初審において、昭和五一年一〇月までチエツク・オフを廃止しない旨言明し、本件で問題とされている同年五月からのチエツク・オフの廃止通告を実質上撤回することを明らかにしたのであるから、救済の対象は消滅しており、被告の救済命令はその対象がないのに命令を発した違法がある。

(3) 労働基準法第二四条違反

本件チエツク・オフが慣行として行なわれてきたことは労働基準法第二四条違反であり、チエツク・オフ廃止の撤回を命ずることは、使用者に労働基準法違反行為の継続を命ずることになり、許されない。

(四) 初審命令主文第三項にかかる事項についての違法

労働時間短縮問題については、従業員のほとんどが歓迎していたことであり、その後原告案に従つて実施し、何ら問題が生じていない。また、現在では組合とも協定し、昭和五五年一月一日から完全週休二日制を実施しており、組合との間にも何ら問題が生じていない。したがつて、原告に、大きな板を掲げて陳謝させるのは相当でない。チエツク・オフについても陳謝板の掲示を求めるのは不当である。会社対組合という組織体間に限られた問題を対象としているのであるから、仮に陳謝させる必要があるとしても、文書の交付にとどめるのが相当である。

二  請求原因に対する被告及び被告補助参加人らの認否

1  請求原因1を認める。

2  同2の主張を争う。

三  被告の主張

本件救済命令は、命令書記載のとおりの理由に基づいて出されたものであつて、もとより正当な命令である。原告の本訴請求は理由がない。

四  被告補助参加人らの主張

1  原告は、労働時間短縮問題に関し、組合と一度も誠実に団体交渉をしたことはない。原告は、労働時間短縮の実施までに七回の団交をなした旨主張しているが、その実態は不誠実団交の典型例といいうるような内容のものであつた。組合が時間短縮委員会に出るべきかどうかは組合が自主的に決定すべきことであるところ、原告が右委員会に組合を参加させようとしたのは、委員会での審議を口実に組合との団体交渉を拒否し、ひいては組合の交渉当事者能力を否認し、組合の威信を低下させるためであることは明らかであつた。

2  被告補助参加人らは、救済申立書において、明らかに時間短縮の団体交渉についての救済を求めたと申し立てており、また、組合の団体交渉申入れの内容、時期については初審、中労委において明らかになつており、双方当事者の攻撃防禦がつくされているから、いかなる救済申立てがなされているかという解釈において、原告の主張する見解を入れる余地はない。

3  原告のチエツク・オフ廃止の意図は、組合弱体化をねらつたものであることは明らかである。原告は、チエツク・オフ廃止通知を撤回した旨主張しているが、本件チエツク・オフ廃止があまりにも明白な不当労働行為であるため、原告は、地労委からの勧告で一時的に廃止を猶予してとりつくろつたが、結局、予定通りチエツク・オフを廃止して現在に至つており、原告のチエツク・オフ廃止は昭和五一年二月二〇日の通告書によつてその意思が明示され、以後一貫して撤回されることなく、現在に至るもチエツク・オフは廃止されているものである。

第三証拠<省略>

理由

一  当事者

1  原告が、肩書地に本社および工場を有し、土木・鉱山用建設機械の製造・販売を業とする株式会社であることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二二四号証によれば、昭和五一年四月現在で、従業員数は九四名であることが認められる。

2  被告補助参加人総評全国金属労働組合神奈川地方本部(以下「神奈川地本」という。)は、神奈川県下の機械金属産業に従事する労働者で組織された労働組合であることは、当事者間に争いがない。

3  被告補助参加人総評全国金属労働組合神奈川地方本部東京流機支部(以下「東京流機支部」という。)は、原告従業員で組織された労働組合で、神奈川地本に加盟していることについては、当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第二二四号証によれば、昭和五一年四月現在の組合員数は三四名であることが認められる。

二  本件救済命令の成立

被告補助参加人両名が原告を被申立人として申立てていた不当労働行為救済申立事件(神労委昭和五一年(不)第三号、同第七号)について、地労委は昭和五一年六月一八日付で別紙二の命令書記載のとおりの初審命令を発したこと、原告は、右初審命令を不服とし、被告に対して再審査の申立てをしたところ(中労委昭和五一年(不再)第五五号)、被告は、昭和五四年一二月一九日付で別紙一の命令書記載のとおりの本件命令を発したこと、本件命令書は、昭和五四年一二月二九日原告に送達されたこと、以上の事実は当事者間に争いがない。

三  本件の経緯

次の各事実については当事者間に争いがない。

1  原告は、これまでに昭和四二年七月、昭和四七年一〇月、昭和四九年二月の三回にわたつて労働時間の短縮を実施してきた。その実施の方法は、第一回の昭和四二年の時間短縮については、団体交渉の合意に基づいて時間短縮委員会を設置し、その答申を得て実施され、その他の時間短縮については、団体交渉で合意し、労働協約を締結のうえ実施された。

2  右第三回の時間短縮が実施されてまもなく、隔週土曜日の休日を要求する時間短縮問題が被告補助参加人東京流機支部から提起された。すなわち、昭和四九年一一月一日、被告補助参加人東京流機支部は年末一時金の要求を行うに際し、時間短縮についても「現行一日の労働時間(七時間一〇分)は、これを維持しつつ、隔週土曜日を休日とすること」との附帯要求を行つた。この時間短縮要求につき、労使は、同年一二月一七日、「昭和五〇年一月末日までに会社案を提出し、協議する。」との協定を締結した。

3  昭和五〇年一月三一日、原告は、右協定に従つて被告補助参加人東京流機支部に対し、「月二回土曜日を休日とする。但し、春休み一日、お盆休み三日は通常通り出勤とし、一日の労働時間を七時間三〇分とする。」との案を提出した。なお、この案によると、現行の労働条件に比較し、年間所定総労働日数は一八日、同労働時間は三九時間それぞれ減少する。

4  その頃、会社は深刻な経営危機に直面しており、一時帰休の実施や希望退職者の募集を行うなどの状況にあつたため、右時間短縮問題に対する労使の折衝は一時棚上げとなつた。

5  昭和五〇年二月二八日、原告と被告補助参加人東京流機支部は、「会社がその責任において行う組合員の配転、出向、帰休、希望退職、退職勧告、解雇および工場閉鎖、会社解散等労働条件を変更する場合は、事前に組合と充分協議する。」旨の協定を締結した。

6  昭和五〇年九月に入つて、原告は、米国のインガーソルランド社と業務提携し、経営危機を回避し得る見通しがたつたので、同月一六日、団体交渉の席上で時間短縮問題に関する一月三一日の会社案を提示し、その処理方法として委員会を設置して審議したいと被告補助参加人東京流機支部に申し入れた。

ついで、一〇月六日、原告と被告補助参加人東京流機支部は、「時間短縮問題については継続審議する。」ことに合意し、協定を締結した。

7  昭和五〇年一〇月二〇日、時間短縮に関する団体交渉が開かれ、原告は、週休二日制を積極的に進めたいが、一日の労働時間を延長せざるを得ないと述べ、今後、委員会を設置し審議を行いたいと提案したところ、被告補助参加人東京流機支部は、委員会方式には反対である旨述べるとともに、現行の一日の所定労働時間を維持し週休二日制を実施し、さらに、メーデー、創立記念日を休日とするよう要求し、結局、物別かれに終わつた。

引き続き、一一月一八日も団体交渉が行われたが、双方とも従来の主張を繰り返すのみで進展はなかつた。

さらに、一二月一日頃にも団体交渉が行われ、原告側は社長も出席し、従来の主張(委員会方式)を述べたうえ、一般従業員の希望もあり、時間短縮委員会を設置するので、委員を出すよう被告補助参加人東京流機支部に要請したが、同支部はこれを拒否した。

8  昭和五〇年一二月八日、被告補助参加人東京流機支部との交渉が進展しない状況の中で原告は同支部に対し、次のとおり時間短縮委員会の設置を通知した。

(1)  翌年一月一日より隔週五日制の実施を目標に委員会を設置し審議したい。

(2)  委員の構成は、会社代表三名、同支部代表三名、一般従業員代表三名とする。

(3)  支部代表委員を一二月一〇日までに選出し会社に届出てもらいたい。

なお、支部代表委員の選出がない時は、会社代表と一般従業員代表のみにより審議し実施する。

9  昭和五〇年一二月一五日、被告補助参加人東京流機支部は、原告に対し時間短縮委員会への参加を拒否し、時間短縮問題に関する団体交渉を行うよう申し入れた。

これを受けて一二月二五日に団体交渉が行われたが、原告は委員会方式による処理を、支部は団体交渉による処理を、と従来の主張を繰り返すのみで進展はなかつた。

10  一方、時間短縮委員会は、被告補助参加人東京流機支部の代表の参加のないまま、会社および一般従業員代表をそれぞれ四名に変更し、八名を構成メンバーとして数回にわたつて開催し、時間短縮問題を審議した結果、昭和五〇年一二月二五日、原告に対し二つの時間短縮案を答申した。これを受けた原告は、翌二六日、そのうちの一案を会社案として決定した。

その内容は次のとおりである。

(1)  原則として毎月第一、第三土曜日およびメーデーを休日とする隔週五日制とし、盆休み(三日)を廃止し、八月のみ毎週土曜日を休日とする。

(2)  隔週五日制実施に伴う一日の所定労働時間数は七時間三〇分とし、始業時刻は午前八時二〇分、終業時刻は午後四時五〇分、休憩時間は一時間とする。

(3)  被告補助参加人東京流機支部の同意があれば早急に実施する。

なお、実施に伴う休日の増加は二一日、短縮される年間総労働時間数は五七時間一〇分であり、その結果、年間総労働時間数は二〇二五時間となる。

11  昭和五一年一月二八日、時間短縮に関する団体交渉が行われた。席上、原告は、右時間短縮に関する会社案を記載した文書および現行の労働時間に関する労働協約を解約する旨を記載した「労働協約解約通知書」を被告補助参加人東京流機支部に手交した。交渉は進展がなく、原告は支部に対し「今回提案した時短案をとにかく五月から実施する。」と通告し団体交渉は終わつた。

12  被告補助参加人両名は、昭和五一年二月一二日、地労委に救済申立てをなした。

13  昭和五一年二月一四日、団体交渉が行われたが、双方とも従来の主張を繰り返した。

14  昭和五一年三月二二日、団体交渉が行われ、席上、被告補助参加人東京流機支部は、一日の所定労働時間を七時間三〇分とするとの会社案に同意するが、休日は会社案に八日ふやすとの案を提示し、原告は、これに対し、否定的態度をとりながらも、一応持ち帰り検討する旨述べた。しかし、三月三一日、原告は、組合案によると会社案の大前提とする年間二〇〇〇時間の年間所定労働時間を大きく割ることになるとの理由で、組合案を拒否した。

15  その後、四月に入つて、時間短縮問題と賃上げ交渉と併せて、四月七日、同月一四日、同月二〇日、同月二二日に、それぞれ団体交渉が行われたが、何らの進展がないままに終わり、結局五月一日から会社案どおりに時間短縮が実施された。

16  原告は、文書による協定はしなかつたが被告補助参加人東京流機支部の求めに応じ、昭和三八年六月以来、業務多忙時も同支部がストライキ等の争議を行つているときも含め約一三年にわたつてチエツク・オフを行つてきた。

昭和五一年二月一〇日、同支部が臨時組合費のチエツク・オフを原告に依頼したところ、原告は、二月二〇日、支部に対し、臨時組合費のチエツク・オフは勿論、従来から行つていたチエツク・オフについても五月分賃金以降、実施しない旨文書で通告した。なお、二月二七日、原告は支部の抗議に対し、チエツク・オフを廃止する理由として、業務が多忙であることおよび組合費の徴収は本来組合自身が行うべきものであるので、本来の姿に戻すのであることを挙げて回答した。

しかしながら、原告は、地労委の審問の席上、当分の間チエツク・オフの廃止を猶予する旨表明し、昭和五二年二月現在もチエツク・オフは実施されていた。しかし、原告は、中労委の審問において、昭和五二年三月末日をもつてチエツク・オフをやめるつもりであると述べた。

四  不当労働行為の成否

1  団体交渉拒否について

(一)  憲法二八条は労働者の団体交渉をする権利を保障し、これを受けて労働組合法七条二号は使用者の正当な理由のない団体交渉拒否を不当労働行為として禁止している。団体交渉は、労働者の団体がその団結力を背景として、その構成員の労働条件について、労使対等の立場に立つて自主的に交渉することをその本質とするものであり、右憲法および労働組合法の規定による団体交渉権の保障も、このような団体交渉を保障することを目的としたものと解される。したがつて、使用者が団交要求を全面的に拒否しあるいは団交申入を事実上無視したりするような場合はもちろん、団体交渉自体は行われたが、使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもつて団体交渉に当たつたとは認められないような場合も、前記規定により不当労働行為とされる団体交渉拒否に当たるものと解される。

ところで、本件において、労働時間短縮に関する団体交渉が何回か持たれたが、労使双方の合意による協約の締結には至らないまま、会社案による時間短縮が一方的に実施されたものであることは前示のとおりである。およそ、使用者は、団体交渉をして協約締結すべき義務まで負うものではないから、協約に到達しなかつたからといつて、常に使用者が誠意をもつて交渉しなかつたということになるわけではない。しかし、使用者は、労働組合が団体交渉を求めてきた場合には、最終的にはなんらかの合意に達し得なかつたとしても、その団体交渉の過程においては自己の主張を相手方に充分に納得させるべく誠意をもつて交渉に当たらなければならず、使用者が、その努力を怠り、団体交渉が充分に進展していない段階において、一方的に当該事項について決定しこれを実施するような場合には不当労働行為となることがあるものというべきである。そこで、以下、このような見地から本件について検討する。

(二)  労使双方の主張の対立点

昭和四九年一一月、被告補助参加人東京流機支部が原告に対して本件の労働時間短縮要求を提示して以降、昭和五一年五月一日、原告が同支部との協約に到達しないまま会社案による時間短縮を一方的に実施するに至るまでの労使の意見の対立および団体交渉の進展状況等の概略は前示のとおりであつて、原告が時間短縮問題の審議を会社、被告補助参加人東京流機支部、一般従業員の各代表で構成する委員会の場でなすことを主張したのに対し、被告補助参加人東京流機支部はあくまで時間短縮問題は団体交渉の場で協議していくことを主張したことが、本件時間短縮問題についての協議の進展の主たる障害であり、一方、時間短縮問題自体についての具体的内容の対立点は、原告が、隔週週休二日制を実施するためには、経営上、年間所定総労働時間数二〇〇〇時間以上を確保する必要があるところから、現行七時間一〇分の一日の所定労働時間を七時間三〇分に延長したいというのに対し、被告補助参加人東京流機支部は、一日の所定労働時間の延長は認め難いというにあつた。そして、証人入江春光の証言および弁論の全趣旨によれば、原告が時間短縮問題を委員会方式で処理したいと主張する理由は、昭和四二年の時間短縮の際にも委員会を設置して審議したし、その後、重要問題の審議にあたつても「退職金改正に関する委員会」、「労働災害補償に関する委員会」、「給与委員会」等が設置されて審議した経緯があり、今回の時間短縮問題は人数において組合員数を上回る非組合員たる一般従業員の労働条件にも影響する事項であるから、一般従業員代表も含めた委員会方式で審議していくのが適当であるというにあり、一方、被告補助参加人東京流機支部が団体交渉による処理を主張する理由は、昭和五〇年二月二八日の協定で「労働条件を変更する場合は、事前に組合と協議する。」とあるし、同年一〇月六日の協定でも「時短については継続審議する。」とあるので、団体交渉で問題を煮つめるのが適当であるというにあり、さらに、同支部は、原告が委員会方式に固執するのは時間短縮問題を団体交渉で決定することを回避しようとしているものと判断したところから、委員会方式による処理にあくまで反対し続けたものであることが認められる。

(三)  原告の団体交渉に対応する態度

成立に争いのない乙第二四七号証ないし第二五三号証、証人黒坂恒男の証言によつていずれも成立の真正が認められる乙第一八七号証、同第二四一、第二四二号証、右乙第二五二号証および弁論の全趣旨によつていずれも成立の真正が認められる乙第二四〇号証、同第二四三ないし第二四五号証、証人入江春光、同黒坂恒男の各証言並びに弁論の全趣旨を総合すると、

(1) 昭和五〇年一二月二五日までの団体交渉は、時間短縮問題を委員会方式で審議すべきか団体交渉の場で協議すべきかの議論に専ら終始し、時間短縮問題の具体的内容についての実質的協議はほとんどされなかつたものである。

(2) 原告は、昭和五一年一月二八日の団体交渉の際、時間短縮問題を団体交渉で協議するか否かについて、「団交でやるなどと約束したことはない。」「(時短問題を団交で)やれといつても、そんな法律どこにある。」「団交でやらなくても委員会で審議した。」などと発言して、時間短縮問題を団体交渉で協議する考えのないことを明らかにし、また、当日原告が提示した時間短縮についての会社案を今後団体交渉で煮つめていく気持はあるのかとの問いに対して、「案で出しているから、煮つめるつたつて煮つめようがない。」「会社とすればこれが最終案だ。」「最終回答だから団交ではやらない。」「団体交渉をやつても煮つまらないという判断をした。」などと発言して否定的態度に終始し、被告補助参加人東京流機支部の「時間短縮問題の団体交渉を今後も申し込むので一応検討して欲しい。」との要望に対して、「とにかく(今回提案した時短案を)五月から実施する。」と回答した。

(3) 原告は、昭和五一年二月二四日の団体交渉の際、「一日の所定労働時間を七時間三〇分に延長したいとする会社案の具体的理由の説明をききたい。」との被告補助参加人東京流機支部の要望に対し、「そんなこと、今言うんだつたら委員会に出ればいい。」「今になつて、その内容を説明しろとか何とかいうこと自体がおかしい。」などと反論しながらも、一応、原告の主張の根拠を説明したが、その説明内容は、「具体的には説明できない。」「隔週週休二日制は時代の趨勢であり、七時間三〇分の一日の所定労働時間は隔週週休二日制を採用しているところでは常識だ。」「年間所定総労働時間数二〇〇〇時間は会社の運営上から確保したい。」といつた程度のものであつて、他社の事例あるいは具体的な分析資料等を示しての詳細な説明はしなかつた。

(4) 原告は、昭和五一年三月二二日の団体交渉の際、最終的には被告補助参加人東京流機支部の案を持ち帰り、委員会に計つたうえで文書で回答する旨述べたが、「組合は委員会に委員を出さなかつたのだから、今となつては、もう時すでに遅い。」「今、組合からそういう案がでても、採用するわけにはいかない。」「一方において労働委員会に提訴されて、我々もそれに対する対応策を立てているから、今さら団体交渉でそんな問題を討議するのはおかしい。」などと発言し、団体交渉の場での右支部案の具体的審議は全くされなかつた。

(5) 昭和五一年四月七日、同月一四日、同月二〇日、同月二二日の時間短縮問題についての団体交渉は、いずれも賃金値上げの団体交渉の合い間に行われたものであつて、その所要時間はいずれも数分から一〇分程度の短時間のものであり、団交内容も、主として協約締結に至らないまま一方的に会社案による時間短縮を実施することの当否をめぐつて、双方、相手方の従来の主張を非難し合つたにすぎないものであり、時間短縮問題についての双方の対立を解消するための協議は全くされなかつた。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(四)  本件労働時間短縮問題は、労働条件の変更に該当し、基本的には年間所定総労働時間数の減少という労働減を目論むものであるが、一日の所定労働時間の延長等、労働者に不利益な労働条件の変更を伴う可能性も含まれているところから、団体交渉の対象となるべき事項であることは明らかである。ところで団体交渉の対象となる事項についての労使間の協議は、必ず団体交渉の方式で処理しなければならないわけではなく、労使双方の合意により、双方に便利で合理的な協議をなし得る方法で協議を煮つめることはむしろ望ましいことである。しかしながら、団体交渉の対象事項の協議を団体交渉に代えて他の方法で進めることは労使双方の合意があつて初めて可能なものであり、双方とも団体交渉以外の方法でこれを協議することに応じなければならない義務を負うものではない。本件において原告が処理方式として主張した委員会方式はそれなりの合理性と必要性を有するものであることはその主張理由自体から肯認できるものであるが、右委員会は一般従業員をも混えての審議機関であること、出席人員も各三名と大巾な制約があることなどからして団体交渉と同視しうるものと認めることはできない。したがつて、原告としては、委員会方式で協議を煮つめることについての被告補助参加人東京流機支部の了解を得るべくあくまでも努力を続ける必要があつたものであり、同支部のこの点に関する了解が得られない以上は、一方において、会社案を審議する方法として独自に委員会を設置することは許されるにせよ、他方において、同支部との協議を団体交渉の場において誠意を尽くして進めていくべき義務を負わされていたものと思料される。しかるに、団体交渉における原告の対応は前認定のとおりであつて、団体交渉の席上で会社案の根拠について多少の説明をしたことは認められるが、その説明は客観的にみて相手方を納得させるに足る充分な説明とは認められないのみならず、原告は、時間短縮問題の具体的内容自体を団体交渉で協議して意見の一致点を見い出す努力をすることを拒否し、会社案を最終案であるとして押し付ける態度にでたものであつて、原告の本件団体交渉における態度は、到底、誠意を尽くした態度であつたと認めることができない。

以上判示したところ及び前記認定の諸事実をすべて総合して判断するときは、原告の右団体交渉に対する一連の態度は労働組合法七条二号にいう団体交渉拒否に該当し、不当労働行為となるものといわざるを得ない。したがつて、この点に関する原告の主張は失当であり、本件救済命令には原告主張のような違法はない。

2  チエツク・オフ廃止について

原告が従前なしてきたチエツク・オフの経緯、チエツク・オフ廃止通告とその後の経緯については前認定のとおりであるほか、証人山本英敬の証言によれば、チエツク・オフは、昭和五二年四月以降、実際上も廃止されていることが認められる。

チエツク・オフは、本来会社がその義務を負うものではなく、会社と組合との間のチエツク・オフを行う旨の合意に基づいてこれをしている場合は、その合意の失効とともに会社がチエツク・オフを廃止することは、特段の事情のない限り、支配介入の問題は生じない。しかしながら、チエツク・オフを行う旨の合意を会社側が一方的に破棄する場合、あるいは明確な協定なしに事実上長期に亙つて会社が異議なく実施していたチエツク・オフを廃止するような場合には、チエツク・オフの廃止を必要とする合理的事情が会社に存することを要するほか、廃止にあたつては交渉または話し合いによつて相手方の了解を得るとか、相手方に不測の財政的混乱を生じさせないように準備のための適当な猶予期間を与えるなど、相当な配慮を要するものと解される。

しかるところ、本件においては、原告のチエツク・オフ廃止の理由とするところは単に業務が多忙であるからというにあり、当該時期において特にチエツク・オフを緊急に廃止しなければならないような事情が原告に存することを認めるべき証拠はなく、前認定のとおり、チエツク・オフ廃止の通告には三カ月の猶予期間が設けられているが、その猶予期間も労働時間短縮問題についての会社案の実施時期と符節を合わせたものであり、しかも、本件廃止通告は、労使間において労働時間短縮問題についての団体交渉が事実上行き詰まつて対立化している時期に、相手方に対するチエツク・オフ廃止の必要性についての事前の説明も了解もなく、突然にその廃止の通告をしたものであつて、その廃止についての通告時期および方法において著しく相当性を欠いたものといわざるを得ない。

そうすると、本件チエツク・オフの廃止の通告は、被告補助参加人東京流機支部が臨時費の徴収を原告に依頼したのを奇貨として、同支部の労働時間短縮問題の対応態度に対しての報復的意図から出たものと推認せざるを得ず、労働組合法七条三号の不当労働行為に該当するものと判断される。この点に関する原告の主張は理由がなく、本件救済命令に原告主張のような違法はない。

六  被救済利益の存否

1  誠実団体交渉命令について

原告は、労働時間短縮問題についての被告補助参加人東京流機支部との協議は既に団体交渉において実質的に尽くされているから、団体交渉を命ずる救済命令の被救済利益はないと主張するが、本件において、労働時間短縮問題についての両者間の協議が団体交渉の場において充分に尽くされたものと認められないことは前判示のとおりであるから、同支部が原告に対して本件労働時間短縮問題についての誠意ある団体交渉を求める被救済利益が消滅していると認めることはできない。

2  チエツク・オフ廃止通知の撤回命令について

原告が昭和五一年二月二〇日にチエツク・オフ廃止通知をなした後、地労委の審問の席上、当分の間チエツク・オフの廃止を猶予する旨を表明してその実施を猶予したことは前認定のとおりであるが、右猶予をもつて通知の撤回と認めることはできず、他に同通知が撤回されたことを認めるに足りる証拠はないから、撤回を求める救済の対象を欠くものとはいえない。また、原告がチエツク・オフ廃止の通知をなしたことが不当労働行為と認められることは前判示のとおりであるから、その後に右猶予があつても、不当労働行為たる通知自体の撤回を求める救済利益は消滅するものではないというべきである。

七  初審命令第一項は申立てのない事実について命令した、との主張について

労働委員会は、申立人が申立をしていない事実について救済を与えることはできないが、申立人が請求する救済の内容については、労働委員会は、申立人の意思を推測して合理的にこれを解釈し、その解釈したところに適合する相当な救済命令を出すことができると解すべきところ、被告補助参加人らの地労委に対する申立は不当労働行為を構成する具体的事実として「時間短縮問題に関し会社が誠意ある団体交渉を行わない」と主張するものであることは成立に争いのない乙第一号証によつて明らかであり、初審命令第一項はこれに対する具体的救済命令と認められるから、この点に関する原告の主張は理由がない。

八  チエツク・オフ廃止通知の撤回を命ずることが労働基準法第二四条違反となる、との主張について

労働基準法第二四条の立法趣旨は、賃金の支払方法のいかんによつて労働者の賃金収入による生活が脅かされる場合があることに着眼し、労働者を保護する目的で規定されたものであり、使用者の法的利益の保障を考慮したための規定ではないことは明らかである。したがつて、右規定に反することを理由に本件命令の取消を求めることは行政事件訴訟法第一〇条第一項により許されないものと解される。原告の右主張は、その余の判断をなすまでもなく、失当である。

九  ポスト・ノーテイスを命ずることの相当性

労働委員会は、不当労働行為が認定される場合に、いかなる救済を与えるかに関しては広汎な自由裁量権を有しており、申立の趣旨に反しない限り、具体的事件に即してできるだけ不当労働行為がなかつたと同じ状態に回復するための適当な処分を命じ得るものであり、一方、原告の本件労働時間短縮問題に関する団体交渉の対応態度が不当労働行為に該当するものと認められること前判示のとおりであるから、労働委員会が原告に対し、不誠実団体交渉を陳謝しかつ今後かかる行為を再び行わない旨を誓約させる旨の文書を掲示せしめることを命ずることは、相当の措置というべきであつて、これをもつて裁量権の範囲を逸脱したものと認めることはできない。

一〇  結論

以上によれば、本件救済命令には原告の主張するような違法はなく、原告の請求は結局理由がないことに帰するから、これを棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 宍戸達徳 杉本正樹 須藤典明)

(別紙一)

命令書(再審)

(中労委昭和五一年(不再)第五五号 昭和五四年一二月一九日 命令)

再審査申立人 東京流機製造株式会社

再審査被申立人 総評全国金属労働組合神奈川地方本部外一名

主文

1 本件初審命令主文第三項記中「実施しました。また、組合費のチエツク・オフに関しても一方的に廃止通知しましたが、今回これらが」を「実施しましたが、今回これが」に変更する。

2 その余の本件再審査申立てを棄却する。

理由

第1当委員会の認定した事実

1 当事者

(1) 再審査申立人東京流機製造株式会社(以下「会社」という。)は、肩書地に本社及び工場を、東京、大阪等に営業所を置き、土木、鉱山用建設機械の製造を行つており、本件結審時の従業員数は約一〇〇名である。

(2) 再審査被申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部(以下「神奈川地本」という。)は、神奈川県下の機械金属産業に従事する労働者で組織された労働組合で、組合員数は約一二、〇〇〇名である。

(3) 再審査被申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部東京流機支部(以下「支部」という。)は、会社の従業員で組織された労働組合で、神奈川地本に加盟しており、本件結審時の組合員数は二五名である。

2 労働時間短縮問題について

(1) 本件の発生に至るまでの経緯

会社は、昭和四二年七月、昭和四七年一〇月及び昭和四九年二月の三回にわたつて時間短縮を実施した。第一回の昭和四二年の時間短縮については、団体交渉の合意に基づく時間短縮委員会を設置し、その答申を得て実施された。その他の時間短縮については、団体交渉で合意し労働協約を締結のうえ実施された。

(2) 本件の経緯

<1> 昭和四九年一一月一日、支部は年末一時金の要求を行なうに際し、時間短縮についても「現行一日の労働時間(七時間一〇分)は、これを維持しつつ、隔週土曜日を休日とすること」との附帯要求を行つた。この時間短縮要求につき労使は、一二月一七日「昭和五〇年一月末日までに会社案を提出し、協議する。」との協定を締結した。

<2> 昭和五〇年一月三一日、会社は上記協定に従い支部に対し、「月二回土曜日を休日とする。但し、春休み一日、お盆休み三日は通常通り出勤とし、一日の労働時間を七時間三〇分とする。」との案を提出した。

なお、会社案によると現行の労働条件に比較し、年間所定総労働日数は一八日、同労働時間数は三九時間それぞれ減少する。

<3> その頃、会社は深刻な経営危機に直面しており、一時帰休の実施や希望退職者の募集を行なうなどの状況にあり、また、支部もこれらの問題の対応に追われていて、時間短縮問題に対する折衝は充分なされなかつた。

そして、二月二八日、会社と支部は合理化対策の実施との関連から、労働者の労働条件に変更をもたらすこともあるので、これを円滑に行うため次のような協定を締結した。

「会社がその責任において行う組合員の配転、出向、帰休、希望退職、退職勧告、解雇及び工場閉鎖、会社解散等労働条件を変更する場合は、事前に組合と充分協議する。」

九月に入つて会社は、米国のインガーソルランド社と業務提携し、経営危機を回避し得る見通しがたつたので、同月一六日、団体交渉の席上で時間短縮問題に関する一月三一日の案を提示し、その処理方法として委員会を設置し審議したいと組合に申し入れた。

ついで、一〇月六日、会社と支部は「時短については、継続審議する。」ことに合意し、協定を締結した。

<4> 一〇月二〇日、時間短縮に関する団体交渉が開かれ、会社は、週休二日制を積極的に進めたいが、一日の労働時間を延長せざるを得ないと述べ、今後、委員会を設置し審議を行いたいと提案したが、支部は、団体交渉で折衝すべき事項であり、委員会方式には反対である旨述べるとともに、現行の一日の所定労働時間を維持し週休二日制を実施し、さらに、メーデー、創立記念日を休日とするよう要求し、結局、物別れに終つた。引き続き、一一月一八日に団体交渉が行われたが、双方とも従来の主張を繰り返すのみで進展はなかつた。

さらに、一二月一日ごろにも団体交渉が行われ、会社は、社長も出席し、従来の主張(委員会方式)を述べたうえ、一般従業員の希望もあり、時間短縮委員会を設置するので、委員を出すよう支部に要請したが、支部はこれを拒否した。

<5> 結局、時間短縮問題については、一つは処理方法で、他の一つは、具体的内容で労使が対立した。

会社が、委員会方式を主張する理由は、昭和四二年の時間短縮の際にも時間短縮委員会を設置し審議したし、その後、重要問題の審議にあたつても支部から専門委員会の設置を求められ、「退職金改正に関する委員会」、「労働災害補償に関する委員会」、「給与委員会」等が設置され審議してきた経緯があるので、今回も委員会を設置して審議するのが適当であるということである。また、会社が時間短縮案として、一日の労働時間を延長して実施することを提案する理由は、経営上、年間総労働時間数二、〇〇〇時間以上を確保する必要があるということである。

一方、支部が、団体交渉による処理を主張する理由は、過去の経緯からしても、また、前記二月二八日の協定で、「……労働条件を変更する場合は、事前に組合と協議する。」とあるし、一〇月六日の協定でも、「時短については継続審議する。」とあるので、団体交渉で問題を煮つめるのが適当であるということであり、また、時間短縮の内容に関する支部の主張は、一日の所定労働時間を延長したうえで週休二日制を採用することは認められないというものであつた。

<6> 一二月八日、支部との交渉が進展しない状況の中で会社は、支部に対し、次のとおり時間短縮委員会の設置を通知した。

ア 翌年一月一日より隔週五日制の実施を目標に委員会を設置し審議したい。

イ 委員の構成は、会社代表三名、支部代表三名、一般従業員代表三名とする。

ウ 支部代表委員を一二月一〇日までに選出し会社に届出てもらいたい。

なお、支部代表委員の選出がない時は、会社代表と一般従業員代表のみにより審議し実施する。

会社が、時間短縮委員会に一般従業員代表(非組合員)をメンバーとして加える理由は、かつては、従業員の大部分が支部組合員であつたが、その後の脱退、退職により現在では支部組合員数の従業員数に占める比率が低下したこと(会社主張によると、支部組合員三四名、非組合員六〇名、ただし、横浜工場では、組合員、非組合員とも同数の三四名ということである)から、支部との折衝のみで時間短縮を決定することは、一般従業員の意見を無視することとなり適切でないというものである。

<7> 一二月一五日、支部は、会社に対し時間短縮委員会への参加を拒否し、時間短縮問題に関する団体交渉を行うよう申し入れた。

これを受けて一二月二五日に団体交渉が行われたが、労使双方とも処理方法についての従来の主張を繰り返すのみで進展はなかつた。

<8> 時間短縮委員会は、当初の会社案では、上記<6>認定のとおり三者代表各三名で構成するものであつたが、支部参加のないまま、会社及び一般従業員代表をそれぞれ四名に変更し、八名を構成メンバーとして、数回にわたつて開催し、時間短縮問題を審議した結果、一二月二五日、会社に対し二つの時間短縮案を答申した。これを受けた会社は、翌二六日、そのうちの一案を会社案として決定した。

その内容は、次のとおりである。

ア 原則として毎月第一、第三土曜日及びメーデーを休日とする隔週五日制とし、盆休み(三日)を廃止し、八月のみ毎週土曜日を休日とする。

イ 隔週五日制実施に伴う、一日の所定労働時間数は、七時間三〇分とし、始業時刻は、午前八時二〇分、終業時刻は、午後四時五〇分、休憩時間は、一時間とする。

ウ 支部の同意があれば早急に実施する。

なお、実施に伴う休日の増加は二一日で、短縮される年間総労働時間数は五七時間一〇分であり、その結果、年間総労働時間数は二、〇二五時間となる。

<9> 昭和五一年一月二八日、時間短縮に関する団体交渉が行われた。席上会社は、「隔週五日制実施に関し、下記案を提示する。」と題する上記時間短縮内容を記載した文書及び現行の労働時間に関する労働協約を解約する旨を記載した「労働協約解約通知書」を支部に手交した。

引き続き交渉が行われたが、その際の会社の態度、発言内容についてみると、「会社は、組合と交渉する意志がなく、現行の労働協約を破棄し、今回の時短案を実施するつもりなのか。」との支部の質問に対し、これを否定せず、支部との団体交渉で処理すべきではないのかとの主張に対し、「団交でやるなどと約束したことはない、何時約束したというのか。」「時短問題を団交でやらなければならないという規則でもあるのか。」などと反論し、「会社案につき、今後団交で煮つめて行く気持はあるのか。」との支部の質問に対し、「もう煮つまつてしまつているので、これ以上煮つめようがない。」「会社とすれば現在ではこれが最終回答だ、もつと良い案があるならそれは検討する。」などと述べ、さらに、「支部が現行の一日の労働時間七時間一〇分に固執し、その延長に絶対反対の態度をとつているから、交渉が進展しないのだ。」と非難し、「それでは会社は、提案のあつた、七時間三〇分の労働時間をいくらかでも短縮する意志はあるのか。」との支部からの質問に対しては、結局、確答を与えずに終つた。このようなやりとりの最後に、会社は、「今回提案した時短案をとにかく五月から実施する。」と通告し団体交渉は終つた。

<10> 神奈川地本と支部は、二月一二日、初審地労委に救済申立てをなした。

(3) 本件申立て後の経緯

<1> 本件の初審神奈川地労委への不当労働行為救済申立て直後の二月一四日に団体交渉が行われたが、双方とも従来の主張を繰り返した。

<2> 三月二二日、支部は、団体交渉の席上、一日の所定労働時間を七時間三〇分とするとの会社案に同意するが休日は会社案に八日ふやすとの譲歩案を提示し、会社は、これに対し、否定的態度をとりながらも、一応持ち帰り検討する旨述べた。しかし、三月三一日、会社は、組合案によると、会社案の大前提とする年間二、〇〇〇時間の年間所定労働時間を大きく割ることになるとの理由で、組合案を拒否した。

<3> その後、四月に入つて、時間短縮問題と賃上げ交渉と併せて、四月七日、同月一四日、同月二〇日、同月二二日に、それぞれ団体交渉が行われたが、何らの進展がないままに終り、結局、五月一日から会社案どおりに時間短縮が実施された。

3 組合費の給料からのチエツク・オフ廃止通知について

(1) 支部は、組合結成直後の昭和三八年六月二二日、会社に対し文書をもつて、支部組合員に対し支給される六月以降の賃金から組合費をチエツク・オフすることを依頼した。会社は、文書による協定はしなかつたが支部の求めに応じ、以来、業務多忙時も支部がストライキ等の争議を行つているときも含め約一三年間にわたつて、チエツク・オフを行つて来た。

(2) 昭和五一年二月一〇日、支部は臨時組合費のチエツク・オフを会社に依頼したところ、会社は、前記、団体交渉拒否に関する救済申立ての八日後である二月二〇日、支部に対し臨時組合費のチエツク・オフは勿論、従来から行つていたチエツク・オフについても五月分賃金以降、実施しない旨文書で通告した。

なお、二月二七日、会社は支部の抗議に対しチエツク・オフを廃止する理由として、業務が多忙であること及び組合費の徴収は、本来組合自身が行うべきものであるので、本来の姿に戻すのであることを挙げて回答した。

(3) 初審神奈川地労委において、会社は当分の間チエツク・オフの廃止を猶予する旨表明し、当委員会における結審時(昭和五二年二月二八日)においてもチエツク・オフを実施している。しかし、会社は、当委員会の審問において、昭和五二年三月末日をもつてチエツク・オフをやめるつもりであると述べた。

以上の事実が認められる。

第2当委員会の判断

1 労働時間短縮問題について

会社は、<1>時間短縮委員会に支部が出席して意見を述べ審議することは、団体交渉の実質を備えるものであり、また、時間短縮委員会への参加を得られなかつた支部とはその答申により会社案が決まつた後においても団体交渉を重ねてきたのであるから団体交渉による協議は尽しているのであり、不当労働行為は成立しないこと、<2>初審申立て後においても支部と団体交渉により協議を尽しているので支部には被救済利益は存在しないこと、<3>初審命令主文第一項は、「昭和五〇年一二月一五日なした労働時間短縮問題に関する団体交渉開催の要求に対し、会社案に固執することなく、速かに申立人等と誠意ある団体交渉を行わなければならない。」とあるが、初審の救済申立てでは、「労働時間の変更について、申立人との団体交渉で協議の整わない場合には、一方的に実施しないこと。」となつており、このような極めて抽象的、包括的な救済申立てに対して具体的、個別的な事項を含む命令をなしたこと自体、申立てのない事項について命令した違法があるが、さらに、そのような事項が手続上攻撃防禦の対象となることを明確にしなかつた点からも申立てのない事項について判断した違法があること、を主張するので以下判断する。

(1) 会社主張の<1>、<2>について

会社が設置しようとした本件時間短縮委員会は、支部の参加を予定したものではあるが、その性格は、会社、支部及び一般従業員の代表をもつて構成する会社の審議機関であり、その答申は、会社がさらに検討を加えたうえ、決するというものであるから、そこでの審議は、団体交渉とは全く異質のものである。

したがつて、支部が会社の態度をもつて委員会方式に固執し、時間短縮問題を団体交渉で決定することを回避しようとするものとみて、委員会方式に反対し、参加を拒んだことを非難するのは当らない。

しかして、会社は、支部の参加のないまま時間短縮委員会を設置し、その答申案の一つを昭和五〇年一二月二六日会社案として採択し、支部には、翌年一月二八日の団体交渉の席上で、これを提示しているが、そこでの会社の態度は、前記第1の2の(2)の<9>認定のとおりであつて、このような重要な労働条件の変更について、会社の案を最終案として示すのみで相手の主張を考慮しようとする態度がみられなかつた。

以上の会社の態度は、時間短縮問題の処理方法について、委員会方式に固執し、時間短縮の内容についてもこれ以上煮つめる余地のない最終案であるとして、いずれも支部の主張に耳をかすことなく問題の処理を強行したものといわざるを得ず、それは、結局において団体交渉を実質的に拒否し、支部の存在を軽視して、その弱体化を図るものであり、これを労働組合法第七条第二号及び第三号に違反するとした初審判断は相当である。

なお、本件申立て後、前記第1の2の(3)認定のとおり、何回かの団体交渉の席上、本件時間短縮問題が取り上げられたことはあるが、それは団体交渉の実質を備えたものとは言い難く、前記判断を左右するものではないと認められる。

(2) 会社主張の<3>について

初審の救済申立ての趣旨は、時間短縮問題に関し、誠意ある団体交渉を行わないことが不当労働行為であるとの前提に立つて救済を求めたものと認められ、また、そのことが攻撃防禦の対象となつていたのであり、初審記録に徴しても会社の攻撃防禦に、特に不利になつていたとみるべき事情は見出せないから、この点に関する会社の主張は理由がない。

2 組合費の給料からのチエツク・オフ廃止通知について

会社は、<1>このチエツク・オフは、単なる事実上の慣行として行われてきたものであり、会社は、これをいつでも自由に廃止することができるが、廃止まで三カ月以上の猶予期間を置いて支部がこれに対処できるよう配慮して廃止の通知をしたのであり、しかも結審に至るもこれを廃止していないのであるから、不当労働行為には該当せず、たとえ、該当したとしても被救済利益を欠いていること、本件チエツク・オフが慣行として行われてきたということは労働基準法第二四条違反というべきであり、したがつて、チエツク・オフ廃止の撤回を命ずることは、使用者に労働基準法違反行為の継続を命ずることになること、<2>初審命令主文第三項は、組合費のチエツク・オフ廃止通知についてポスト・ノーテイスを命じているが、これは、初審申立人等の請求のない事項について命じた違法があること、を主張するので以下判断する。

(1) 会社主張の<1>について

このチエツク・オフについては、書面による協定にないとはいえ、支部の依頼に応じて、すでに、一〇数年間継続して行われてきたものであるから、これを廃止するためには、それ相応の理由と廃止の時期等についての慎重な配慮があつてしかるべきところ、会社は、業務多忙及び本来あるべき姿にもどすことを理由にこれまで続けてきたチエツク・オフの廃止通知をなしているが、その時期に特別に業務が多忙となつたとする疎明もなく、また、他に廃止せざるを得ないとする差し迫つた事情も認められない。してみると、新たに支部から申入れのあつた臨時組合費の徴収の拒否であればともかく、支部が労働委員会に不当労働行為の救済申立てをした時期に突然通常の組合費の徴収まで一方的に廃止しようとしたことは、廃止までに、たとえ三カ月の猶予期間を置き、かつ廃止をさらに延伸したとしても、支部の臨時組合費の徴収依頼を奇貨として、支部の救済申立てに対する報復の意図から出たものと推認せざるを得ない。したがつて、これを労働組合法第七条第三号の不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。

また、会社は、初審がチエツク・オフ廃止通知の撤回を命ずることは、労働基準法違反行為の継続を命ずることにほかならないというが、初審判断は、会社が支部に対して報復的意図をもつて当該行為を行うことが支部に対する支配介入に該当するという理由でその撤回を命じているものであつて、これをもつて労働基準法違反を命ずるものであるとする会社の主張は採用し難い。

(2) 会社主張の<2>について

労働委員会は、事件の具体的実情に応じ、申立人の請求の趣旨に反しない限り必要と認める救済方法を講ずる裁量権を有するものであつて、申立人が請求する救済の内容にポスト・ノーテイスを求める旨を掲げていないという一事をもつて、これを命じ得ないと断ずることはできないけれども、本件チエツク・オフ廃止問題の経緯にかんがみると、請求のないポスト・ノーテイスをとくに附加して救済するまでの必要性に乏しいと認められるので、チエツク・オフ廃止通知に関するポスト・ノーテイスは、これを取消すのが適当であると判断する。

3 ポスト・ノーテイスについて

会社は、<1>不誠意団体交渉およびチエツク・オフの廃止通知の撤回についての救済として縦一メートル、横二メートル以上の白色木板を本社正面に掲示させて陳謝せしめるのは、不当労働行為の救済としては過ぎたるものであること、<2>内容についても、会社の客観的外形的行為をまず述べさせ、それが労働委員会において一定の判断をうけた旨記載させるのが妥当であり、陳謝文の中に労働委員会の価値判断を入れていることは不当であると主張するので、以下判断する。

労働委員会は、労使関係の正常化を図るために必要な事項を裁量により命じうるものであり、ポスト・ノーテイスも不当労働行為救済方法の一つとして用いられるものである。本件ポスト・ノーテイスについてみると、その内容、表現、形状、大きさ等において格別異例のものではなく、この点に関する初審委員会の裁量を特に不当とは認め難い。したがつて、上記第2の2の(2)によりチエツク・オフの廃止通知にかかわる部分を削除するほかは、本件ポスト・ノーテイスを取消し、またはその文言を変更しなければならない必要性は、認め難いので、これらに関する会社の主張は採用し難い。

以上のとおりであるので、上記判断に基づき、初審命令主文の一部を取消すことを相当と認めるほか、本件再審査申立てには、いずれも理由がない。

よつて、労働組合法第二五条、同第二七条及び労働委員会規則第五五条を適用して主文のとおり命令する。

(別紙二)

命令書(初審)

(神奈川地労委昭和五一年(不)第三七号 昭和五一年六月一八日 命令)

申立人 総評全国金属労働組合神奈川地方本部外一名

被申立人 東京流機製造株式会社

主文

1 被申立人は、申立人、総評全国金属労働組合神奈川地方本部東京流機支部が被申立人に対し昭和五〇年一二月一五日なした労働時間短縮問題に関する団体交渉開催の要求に対し、会社案に固執することなく、速かに申立人等と誠意ある団体交渉を行わなければならない。

2 被申立人は、組合費の給料からの天引(チエツク・オフ)廃止に関する昭和五一年二月二〇日付通知を撤回しなければならない。

3 被申立人は、縦一メートル、横二メートル以上の白色木板に下記のとおり明瞭に墨書し、被申立人の本社(横浜工場)正面入口の見易い場所に毀損することなく一四日間これを掲示しなければならない。

申立人組合ら代表者あて

会社は昭和五一年五月一日から実施している労働時間の短縮につき、貴組合東京流機支部からその内容協議のため団体交渉を開くよう前々から申入れを受けていたにもかかわらず、誠実にこれに応ぜず一方的に実施しました。また、組合費のチエツク・オフに関しても一方的に廃止通告しましたが、今回これらが神奈川県地方労働委員会から労働組合法第七条に違反する不当労働行為である旨認定されました。よつてここに陳謝の意を表するとともに再びかかる行為を一切行わないことを誓約いたします。

昭和  年  月  日

被申立人会社代表者名

理由

第1認定した事実

1 当事者

(1) 被申立人東京流機製造株式会社(以下「会社」という。)は、肩書地に本社および工場を置くほか、東京・大阪・広島等に営業所を有し、土木、鉱山用建設機械の製造および販売を主たる業務とする株式会社である。

会社はもと東京都大田区南六郷一丁目に本社および工場を有していたが、昭和四九年三月これらを肩書地に移転し、次いで翌五〇年九月、米国に企業籍を置く同業会社たるインガーソルランド社と業務提携(インガーソルランド社が株式六〇%を保有)をしたものであつて、昭和五一年四月二五日現在の資本金一二、五〇〇万円、従業員数九四名である。

(2) 申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部(以下「神奈川地本」という。)は、神奈川県下において機械金属産業に従事する全国金属労働組合員約一二、〇〇〇名をもつて組織する労働組合である。

(3) 申立人総評全国金属労働組合神奈川地方本部東京流機支部(以下「支部」という。)は、会社の従業員中組合員三四名(昭和五一年四月二五日現在)をもつて組織する労働組合である。

支部は昭和三八年五月頃、東京都大田区南六郷一丁目の旧会社本社および工場内において結成され、昭和四〇年三月総評全国金属労働組合東京地方本部に加盟したが、昭和四九年七月会社本社および工場の肩書地移転に伴つて神奈川地本に移籍し現在に至つているものである。

2 労働時間短縮問題について

(1) 労働時間短縮(以下「時短」という。)の決定およびその実施に関するこれまでの経緯

ア 会社および支部は昭和四一年五月一四日

(ア) 労働時間を短縮すること

(イ) 時短の具体的内容、およびその実施時期に関しては別に設ける時間短縮委員会において審議しその結果を答申する。

(ウ) 時間短縮委員会の構成は委員長一名、会社側委員三名、支部側委員三名の計七名とし、委員長には学識経験者たる第三者(公認会計士)をもつてこれに充てる。

との協定を締結した。そして同年六月七日に時間短縮委員会(以下「第一次時短委員会」という。)を発足させ、同委員会は定例会、臨時会を重ねた末、翌昭和四二年三月三一日次のような答申を行つた。

(ア) 時短実施時期を昭和四二年七月一日とする。

(イ) 一日の労働時間を三〇分短縮し、七時間三〇分とする。

(ウ) 現行午前八時始業を午前八時三〇分とする方法によりこれを実施する。

このような経緯のもとに第一回目の時短は、第一次時短委員会の答申どおりに実施された。

イ 会社および支部は昭和四七年九月一三日時短に関し以下のとおり協定した。

(ア) 一日の労働時間は現行どおり七時間三〇分とし年間労働時間のうち四五時間、労働日数にして六日間を短縮する。

(イ) 時短の実施時期は同年一〇月一日とし、実施に関する具体的内容・方法は三役交渉によつて決する。

(ウ) 将来の労働時間については、当面の目標を週休二日制に置き、段階的にその実現をはかるべく社会状勢の進展と社内生産性を勘案して労使双方で前進的に協議し合意のもとに実施する。なお週休二日制を会社が実施する段階では一日の労働時間についても協議のうえ決定する。

以上の協定に基き第二回目の時短は上記(ア)および(イ)に従つて実施された。

ウ 会社の本社および工場が肩書地に移転したことについては前述したが、これに伴い従業員の多くが通勤に長時間を要することとなる実情にかんがみ、昭和四九年一月一九日、会社支部間において第三回目の時短協定がなされた。

その内容は「一日の実労働時間を二〇分短縮し、七時間一〇分とする。始業時間は午前八時二〇分とし(従つて終業時間は三〇分繰り上つて午後四時三〇分となる。)同年二月一日からこれを実施する」というものであつた。なお会社は組合に対し、昭和五一年一月二八日付文書を以つてこの協定を解約する旨通知している。

エ 支部は昭和四九年一一月一日、会社に対する年末一時金要求を行うに際し、時短に関しても「現行一日の労働時間はこれを維持しつつ、隔週土曜日を休日とする」との附帯要求を行つた。

同上年末一時金闘争は同年一二月一七日に妥結をみたが、同時に時短に関しても「昭和五〇年一月末日までに会社案を提示して協議する」との話合いがつき、この旨を同日付協定書の中に記載した。会社は上記協定の約旨に従い昭和五〇年一月三一日、支部に対し「月二回土曜日を休日とする。但し春休み一日、お盆休み三日は通常通り出勤とし、一日の労働時間を7時間三〇分とする」との案を提示した。しかし、その頃会社は深刻な経営危機に直面しており、一時帰休の実施や希望退職者の募集等に意を用いなければならない状況下にあり、また支部としても仕事に対する将来の不安から組合員間にかなりの動揺もあつて、結局労使共平常の勤務体制を前提としての時短問題を論ずるほどの余裕を失つたまま、この時短問題は自然棚上げされた形となつた。

(2) 今回の時短問題について

ア 会社はインガーソルランド社との業務提携の結果、経営危機を回避し得る見とおしがたつたとして、昭和五〇年九月一六日昇給に関する団体交渉の席上、時短問題(週休二日制)を再提案した。

上記昇給問題は同年一〇月六日妥結したが時短についてはこれを継続審議事項とすることとし、同日付協定書にその旨の一条項を挿入した。ところで、時短に関する協議の方法として会社は時間短縮委員会(以下「第二次時短委員会」といい、その性格については後述する。)の設置を強く主張し、一方支部は団体交渉による話合いを主張して時短委員会設置に反対した。会社が第二次時短委員会の設置を主張する理由は、第一回目の時短の際も第一次時短委員会によつて審議がなされたものであることのほか、その後も重要問題の審議にあたつてはむしろ支部の方から専門委員会の設置要求が出されたくらいであつて、過去「退職金改正に関する委員会」「労働災害補償に関する委員会」「給与委員会」等(以上の各委員会を総称して「特別委員会」という。)が設けられ、重要問題の審議答申が行われてきた経過に照らし、今回の時短も時短委員会を設置してそこで審議するのが最も適当であるというものであつた。

しかし支部は会社の提案を納得せず、また会社も支部の団交説を拒否し続けたので、結局時短の具体的内容まで立ち入つた実質的な話合いはなされないまま推移した。

イ 会社は昭和五〇年一二月八日、支部に対し文書を以て第二次時短委員会の設置を通知した。その内容は

(ア) 会社側三名、一般従業員代表三名、支部側三名をもつて構成する第二次時短委員会を設置する。

(イ) 支部は委員三名を一二月一〇日までに選出して会社に届出ること。

(ウ) 支部が委員の選出をしない時は、会社側と一般従業員代表のみによつて時短案を審議検討し実施する。

というものであつた。会社はこのように時短問題を支部との団体交渉によらず、一般従業員代表(非組合員)をも含めて審議しようとする理由として、かつては従業員の大部分が支部組合員であつたが、その後脱退等により現在では支部組合員数が会社従業員数に対して占める比率がそれほど高くなくなつたこと(会社主張によると支部組合員三四名、非組合員約六〇名、ただし同一事業場である横浜工場について見る限り、組合員非組合員とも同数の三四名と認められる。)、したがつて時短問題を支部との団体交渉によつて審議することは、大多数を占める非組合員たる一般従業員の意見を無視することとなつて適切ではないことを挙げている。そして第二次時短委員会における審議、およびこれが最終決定方法は、まず第二次時短委員会が二つの案を採択し、後に取締役会においてそのうちいずれか一つの案を採用してこれに決定するというものであつた。

ウ 支部は会社に対し同年一二月一五日付文書をもつて、第二次時短委員会への出席拒否を通告するとともに、時短問題につき早急に団体交渉を行うよう申し入れた。

エ 会社は昭和五〇年一二月二五日支部組合員の出席のないまま、入江春光常務取締役ほか非組合員七名から成る第二次時短委員会を開いて二つの案を採択し、次いで翌一二月二六日の取締役会においてそのうちの一つたる下記の案を採用することに決定した。

(ア) 原則として毎月第一第三土曜日、およびメーデーを休日とする。

(イ) 会社休日、春休み一日、夏休み三日は従前どおり。

(ウ) お盆休み三日を廃止し、八月のみ毎週土曜日を休日とする。

(エ) 一日の労働時間を二〇分間延長して七時間三〇分とし、始業時間を午前八時二〇分、終業時間を午後四時五〇分とする。

(オ) 以上実施に伴い短縮される年間労働日数は二一日、同じく短縮される年間労働時間は五七時間一〇分である。

オ 会社は昭和五一年一月二八日に支部との間で時短に関する団体交渉を行つた。その冒頭会社は、支部に対して手交すべく持参した文書二通即ち「隔週五日制実施に関し、下記案を提示する」と題し、上記時短内容を記載した文書および「労働協約解約通知書」と題し、現行労働時間に関する前記2(1)ウの時短協定を解約する旨記載した文書をそれぞれ読み上げた(支部はこのとき初めて会社から今回の時短内容を知らされた)。

そして引続き団体交渉に入つたが、その際の会社の態度、発言内容をみると、「(会社は)組合と(時短問題を)交渉する意志は全くなく、労働協約(現行時短協定)を破棄してこれ(今回の時短案)を実施するつもりか」との支部質問に対して先づこれを肯定し、「(会社は時短問題を)団交でやるなどを約束をしたことはない、何時約束をしたというのか」「時短問題は団体交渉でやらなければならないという規則でもあるのか」等と反論し、また「(今日示された会社案につき)今後それを団体交渉で煮つめて行く気持はあるのか」との支部質問に対しては「もう煮つまつてしまつているので(これ以上)煮つめようとしても煮つめようがない」と答え、「会社とすればこれが最終案だ」と断言し、さらには「支部が現行一日の労働時間七時間一〇分に固執し、その延長に絶対反対の態度をとつているから、それ以上に交渉が進展しないのだ」と支部を非難し、「それでは会社は(今回提示された)一日の労働時間七時間三〇分をいくらかでも短縮する意思はあるのか」との支部反論に対しては結局確答を与えないまま終つている。そして会社は最後に「(今回の時短を)とにかく五月から実施する」と通告して席をたち同日の団体交渉を終つた。

カ 会社と支部との間では、本件救済申立て後においても同年二月中に一回、三月中に一回、四月中には四回、本件時短問題につき団体交渉が行われ、またその間、会社は今回の時短を同年五月一日から実施する旨支部に通知し、結果的にはそのとおり実施された。

3 チエツク・オフの廃止について

(1) 支部は組合結成の直後である昭和三八年六月二二日、会社に対し文書をもつて支部組合員に対し同年六月以降支給される毎月の給料の中から組合費として本給の一五%相当額を天引徴収してもらいたい旨依頼し、会社はこの依頼に応じ、それ以来会社業務が繁忙をきわめているときもまた支部がストライキを含む争議行為を行つているときもかわることなく、本件救済申立てに至るまで約一三年間、毎月いわゆるチエツク・オフを行つてきた。

(2) 会社は本件救済申立ての三日後である昭和五一年二月二〇日支部に対し同年五月分給料支給時以降チエツク・オフは行わない旨通告した。

第2判断および法律上の根拠

1 時短問題について

(1) 第一次時短委員会および特別委員会の性格

第一次時短委員会は、先に認定したとおりその成立、構成、権限等すべて会社と支部との団体交渉の集約である協定にその根拠を置くものである。また会社が今回の時短問題につき、第二次時短委員会を設けるための前例として挙げている特別委員会も、人員割、提出された答申に対する措置、その他必要事項一切が会社と支部の団体交渉によつて決定されているものであつて、しかもその構成員は上記各委員会とも会社側および支部側のみであつた。もつとも第一次時短委員会には委員長として公認会計士が入つているが、これは公認会計士の学識、経験の力を借りるためであつて、公認会計士が利害関係の当事者として参加しているわけではないので、これをもつて第三者を含めた委員会とみることは妥当ではない。

そうしてみると第一次時短委員会の審議といい、または特別委員会の審議といつても、それはいずれも会社対支部の審議であり、さらにいうならば実質的には団体交渉そのものとも見られるべきものであつた。

(2) 第2次時短委員会の性格

これに対し第二次時短委員会は、設置、構成、人員割、審議方法等すべて会社が一方的に決めたものであり、支部の意向は全く反映されていない。また会社および支部並びに非組合員たる一般従業員の各代表をそれぞれ当事者として参加させる三者構成を採つている点において、会社対支部の直接交渉の場とは言えず、さらに各側代表の権限も二つの案を採択するだけであつて、終局的な決定権はひとり会社にのみ保留されていること等からみて同委員会が第一次時短委員会や特別委員会とは全く異質なものであることは極めて明白である。

したがつて、支部が第二次時短委員会での審議に同意しない限り同委員会は支部との関係においては、団体交渉に代るべき、またはこれと同一視されるべき役割を果す機能は全く有していないものといわざるを得ない。

(3) 会社の支部に対する第二次時短委員会への出席要求について

会社は今回の時短問題の審議は団体交渉で行うべきであるとする支部主張に対し、第二次時短委員会以外での交渉には応じられないとの態度をとつてきた。

そして会社としては、今回に限らず前々から時短問題が話題に上つたつど、団体交渉ではなく時短委員会で審議する旨を繰り返し述べてきたし、支部もこれに対してなんら異議をさしはさまなかつたばかりか、現に第一次時短委員会のほかに特別委員会を設けて審議した前例があることを強調している。

なるほど、会社が従前から折にふれ時短委員会での審議を主張してきたことは推認されないではないが、それはあくまでも同委員会が第一次時短委員会や特別委員会と同質のものであることを前提としての主張と解され、それであるからこそ支部も異議を述べなかつたものと認められる。

しかし、今回の時短問題に関する第二次時短委員会は、第一次時短委員会、または特別委員会と全く異質のものであることは前述のとおりであつて、第二次時短委員会での審議即団体交渉と言い得るものではない。したがつて会社としては、時短という重要なる労働条件の変更に関する事項につき、支部からこれを団体交渉によつて審議するよう申入れを受けたならば、当然これに応じて誠実に交渉をすすめるべき義務があることは言うまでもないところであつて、支部の組合員数が、会社全従業員数に比して占める割合がそれほど高くないとの理由のもとに、支部を独立した交渉の相手方と認めず、第二次時短委員会設置の通知とともに同委員会への代表選出を求めるがごとき会社の行為は、団体交渉の拒否であるとともに、支部の自主性を否定しその運営に介入する不当労働行為であつて労働組合法第七条第二号、第三号違反に該当する。

(4) 昭和五一年一月二八日の団体交渉について

同日の団体交渉は、会社が支部から出されていた昭和五〇年一二月一五日付団体交渉申入れに対し、受身の形でこれに応じたというものではなく、むしろ会社の方から積極的にその開催を希望したものであつた。そしてその経過、交渉内容は先に認定したとおりであり、これで見る限り、会社は自説の主張とその実施時期を支部に通告するためにのみ同日の団体交渉を開いたものとしか認められない。すなわち、会社は冒頭においてまず第二次時短委員会の審議を経て決定した今回の時短内容を初めて支部に明らかにするとともに、支部がこれについての意見を述べる暇も与えず引き続いて現行労働時間に関する昭和四九年一月一九日協定の解約を通告し、ついで交渉に入つた後も、今回の時短内容が会社の案であるといいながらも結局は支部とこれ以上協議の余地のない最終的なものであることを極力強調し、さらに交渉が進展しないのは支部が一日の労働時間七時間一〇分に固執し、譲歩しようとしないからだと支部を非難しながらも、それでは会社案たる一日の労働時間七時間三〇分につき、会社は交渉いかんによつてこれを短縮する意思があるのかの点になると遂に確答を避け、最後に、支部の意向にかかわらず同年五月からこれを実施するものであることを通告している。団体交渉に臨み、このように自説にのみ固執し、支部の意見に耳を傾ける柔軟な姿勢はいささかも示さず支部を非難はしても自らを反省しようとはせず、しかも現行協定を一方的に破棄してまで自説を実施しようとする会社の態度は、正に不誠実のそしりを免れないものであつて、同日の団体交渉をもつてしては、会社が支部の時短に関する団体交渉申入れに対し、末だ誠意をもつてこれ応じたものとは認め難い。

(5) その後の団体交渉について

会社と支部の間では、その後も何回か時短に関し団体交渉が行われたものと認められる。しかし、上記団体交渉はいずれも本件救済申立て後に行われているにもかかわらず、依然として同上救済申立てが維持されていること、および会社が予定どおり今回の時短を同年五月一日から実施しているという事実のほかには、特に会社が前述一月二八日の団体交渉の際の不誠実な態度を改め、誠意をもつて交渉にあたつたと認められる証拠は一切ない。

よつて会社は、支部の昭和五〇年一二月一五日付時短に関する団体交渉申入れに対し、現在まで誠意ある団体交渉に応じていないものと認定せざるを得ず、なお申立人の被救済利益は消滅したものとは認め難い。

2 チエツク・オフの廃止について

(1) 会社の主張

会社の行つてきたチエツク・オフは、労働基準法第二四条所定の協定、若しくは労働協約に基く法律上の義務としてではなく、単なる事実上の慣行として行われてきたものに過ぎないので、会社はいつでも自由にこれを廃止することができる。

支部は、その根拠が黙示の契約にあると主張しているようでもあるが、黙示の契約は労働協約たり得ないので、結論は上記と同一である。したがつてこれが廃止につき、当、不当が問題とされることはあつても、法律上の義務違反、すなわち違法性が云々される余地は全くない。しかも会社は、廃止通知から廃止まで三か月以上の猶予期間を置いているので不当性も問題とはならない。

会社がチエツク・オフを廃止した理由は、インガーソルランド社との業務提携によつて事務繁多を来たし、これが合理化、簡素化を計る必要性に迫られていたからであり、廃止に踏み切つた動機は、支部が当委員会に係属中の神労委昭和五一年(不)第三号事件の資金調達のため、従前のチエツク・オフに加えて、さらに臨時組合費の徴収まで会社に求めてきたことにあつた。元来、組合費は組合自らがその手によつて徴収すべきものであつて、会社がこれに代つて徴収することは一種の経費援助にあたり、度を越えたチエツク・オフは却つて不当労働行為になりかねない。支部が臨時組合費の徴収まで求めてきた態度は、上記救済申立事件の係属によつて完全に対立関係に立つた会社に対し、一方で闘争を行いながら、その闘争を有利に導くため他方において同一相手方から経費援助を得ようとするものであり、非常識な甘えと言う外はない。会社としては支部のこのような甘えを正し、チエツク・オフの意義や本質を充分に認識してもらつたうえ、良識ある労使関係を確立したいとの願いから、あえてチエツク・オフの慣行を廃止することに踏み切つたものである。したがつて会社には、チエツク・オフの廃止によつて支部を弱体化しようとか、あるいは救済申立てに対し報復をしようとかの意図は全くなかつたものである、と主張している。

(2) 会社の主張に対する当委員会の判断

チエツク・オフの根拠、およびこれが廃止に関する適法、違法、若しくは当、不当の会社見解は、一般論としてはとにかく本件では特にこの点を論議の対象とする必要性はないものと解する。本件で問題とされるのは、これまでの約一三年間、会社業務が繁多のときであれ、あるいは支部がストライキを含む争議行為中であつても、かかる四囲の事情にかかわりなく続けられてきたチエツク・オフを、会社が今回、支部として初めての試みである当委員会への救済申立てを行つた八日後に、一方的にこれが廃止を通告した行為が、組合活動との関連においてどのように客観的に評価されるべきかであつて、上記一般論とは異る次元において検討されなければならない事柄に属するものである。

まず、会社が約一三年の長期にわたり、チエツク・オフを継続してきたという事実は、過去の支部財政面に大きく寄与したであろう反面、支部をして将来ともチエツク・オフは継続されるもの、換言すれば支部の財政的基盤はチエツク・オフにより当然確保され得るものとの確信に近い期待を抱かせたであろうことも容易に推認されるところであり、そうだとすれば今回の会社の一方的なチエツク・オフの廃止通知(猶予期間の有無にかかわらず)は、この支部の確信に近い期待に打撃を与え、支部をして財政上、ひいてはその運営につき多大の危惧、不安を抱かせたであろうこともまた推認するに難くない。

つぎにチエツク・オフ廃止通知の時期についてみると、かつては争議行為中であつてもこれを継続してきたにもかかわらず、今回に限り支部が当委員会への救済申立てという新たな手段に訴えるや、八日後にこれが廃止の通知を発していること、さらに廃止の動機についても、支部が上記救済申立事件の資金調達のため臨時組合費の徴収を会社に依頼したことが非常識な甘えであり、これを正すためというのであれば、臨時組合費の徴収依頼のみを拒否しても一応はその目的を達するものと解されるところ、それを超えて上述のとおり支部の運営上最も打撃の大きいチエツク・オフそのものの廃止に踏み切つていること、等を客観的に総合すると、会社の今回のチエツク・オフ廃止の通知行為は、支部が当委員会へ救済申立てをなしたことに対する報復であり支部の運営に介入する労働組合法第七条第三号の不当労働行為に該当するものと認めざるを得ない。

以上のとおり会社の行為はいずれも不当労働行為に該当すると認められ、さらに申立人等は「被申立人は、申立人等と団体交渉を行いそこでの協議が整わない限り、今回の時短を実施してはならない」という趣旨の救済をも求めているが、主文第1項および同第3項による救済が適切であると認められる。

よつて当委員会は、労働組合法第二七条並びに労働委員会規則第三六条および第四三条の規定により主文のとおり命令する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例